石油精製の未来は石油化学にあるのだろうか TSE(2020)

石油精製の未来は石油化学にあるのだろうか TSE(2020)

  • 過去10年間で世界が目撃したのは、石油供給のピークについての心配から、それほど遠くない未来にある石油需要のピークの考慮へと、急激なシフトだった。
  • 供給と需要の認識のこうしたシフトは、石油精製というビジネスについての部分的な再考を引き起こした。特に、石油化学は、石油精製企業にとってますます重要なターゲットとしてみられている。
  • しかしながら、石油化学が疑いもなくひとつのチャンスである一方、すべてのこうしたチャンスが石油精製企業にとって利用可能なわけではない。おそらくはこれは、すべての石油精製企業に開かれた選択肢ではない。
  • 幸運なことに、石油化学がますます重要な役割を石油需要においてはたすであろう一方、石油精製企業にとっては石油化学をこえるストーリーが残っている。

石油化学市場のチャンス

  • 私達はほとんど、石油化学市場のポテンシャルを無視している。石油化学製品はどこにでもあり、それらは私達の現代の社会にとって不可欠だ。
  • シングルユースのプラスチックを減らす必要性に対しては公衆の注目が高まっているが、消費者文化には本質的な変化が今日まだ起きていない。われわれはいつも、次のよい財の探求の途上にいる。ファッションで流行にのるため、または、形態の最新モデルを所有するためだ。
  • この行動は、特に発展途上(国)の経済で、都市化と中間層人口の増大を背景として生じている。可処分所得の上昇とともに、それはより大きな消費を駆り立てるだろう。
  • The Brookings Institutionという、(米国の)ワシントンに基盤を持つ非営利の公共政策についての組織は、毎秒、5人の人々が中間層人口に加わっていると評価している。
  • ICISの予想では、2040年までの長期では、石油化学物質の総需要は、毎年3.2%ごと平均で上昇する。GDPよりもわずかに上の値だ。ポリエステルとポリオレフィンが強い成長をみる。
  • 絶対な観点から成長を見ると、ICISは2018年と2030年の間で、世界が全体として石油化学品の需要が約193百万トン定期的な上昇を予想している。そして、その次の2040年までの10年間で、加えて162百万トンの需要が上昇すると予想している。ポリオレフィンは、その成長に対する主要な要因となる。

原料の多様化と、成長するリサイクル化の取り組み

原料の多様化(石炭、天然ガス、そしてシェールガス

  • それはそれとして、相当な355百万トンもの追加の石油化学物質を満たす必要のある原料が、石油精製のターゲットとなる。しかしながら、すべての石油化学の原料の需要が石油精製が利用できるわけではない。原料の多様化(dicersification)と成長するリサイクル化の取り組みのためだ。
  • スチーム・クラッキング石油化学生産のカギとなる原動力であリ続ける一方、非伝統的な方法も重要なシェアを得ると予想されている。そうした非伝統的な方法とは、石炭からオレフィンへ(coal-to-olefins:CTO)や、メタノールからオレフィンへ(methanol-to-olefins:MTO)そして、プロパンの脱水素化(propane dehydrogenation:PDH)などだ。それらは10年後に12%ほどになると予想されている。10年前(メモ:いつをreferするか微妙。現在のこと?それとも2010年前後?)にはたったの2%にもかかわらずだ。
  • PDHの上昇は、特に米国と中東から輸入されたNGL(液化天然ガス)の入手可能性と、プロピレンの成長する需要に支えられてきた。意図的なプロピレンの生産は、副産物(co-products)の管理なしでプロピレンの需要にこたえるためあまり資本集約的(capital-intensive)ではなく、魅力的な選択肢となってきた。
  • 注目する価値のあるのが、2010-2018年に増加したプロピレンの能力の30%近くが、PDHだったということだ。より大きなPDHの能力が予想されている。そして、PDHは2030年までに世界的にはプロピレンの供給の約18%を占めると予想されている。
  • 一方、CTOとMTOの投資は中国で行われ続ける。石炭をめぐる環境的な心配はあるものの、これらの石炭立地な内陸の領域ではまた、中国政府にとって優先順位が高いのだ。
  • CTOとMTOの約5.9百万トン/年(tonnes per annum:tpa)の能力が2020-2022の間に加えられると予想されている。さらに、輸入されたメタノールに依存するMTOの発展は、しくじると予想されている。
  • しかしながら、中国の大きな石炭の予備を考慮すれば、CTOへの投資は残るだろう。ICISは約5.2百万トン/年のCTOの公表された能力が投機的であると考えている。
  • 石油精製企業に対する原料市場を部分的に取って代わるであろう非伝統的な方法に加え、スチーム・クラッキング原料スレート(slate?)の軽質化は、ナフサの必要性を幾分か減らすだろう。
  • この動きは、アメリカと中東の国内のエタン・クラッキングの拡大に、主に理由を帰すことができる。
  • 特に、米国には2017年以降立ち上げられた8百万トン/year以上のエタンクラッカーの容量がある。さらなる6.6百万トン/yearが現在から2022年までに加えられると予想されている。
  • アジアなど国際的な市場では、輸入されたエタンとLPGの増大した利用がある。この地域での将来の拡大には、the Zhejiang Satelite Petrochemicalのエタンクラッカー計画が含まれる。この計画は、2021年と2023年に立ち上がる、2つの1,250,000トン/yearのエタンクラッカーで構成されている。
  • 一方、PetroChinaも6000,000トン/yearのエタンクラッカーを新疆(Xinjiang)区で2023年に立ち上げることを計画している。これはタリム盆地の油田から得られた国内のエタンを利用するものである。

リサイクル化の取り組み

  • さらに、特にプラスチックでのリサイクルの取り組みはは、サーキュラー・エコノミーへの採用にむけた情熱に駆動させられて、牽引されている。バージン・レジンの需要の一定のポーションは、それゆえ原料の需要も、置き換えられるだろう。その影響は長期ではより大きいおよぶように感じられるが。
  • プロピレンの市場では、現在、世界のポリプロピレン(PP)生産のたったの2%のみが、現在リサイクル品で占められている。ICISは、そのシェアが2040年までに3倍以上になると予想している。

ナフサの役割

  • しかしながら、米国と中東の外では、ナフサが重要で妥当なクラッカーのフィードストックでありつづける。アジアでは、ICISは、2018-2040の間で210百万トンの徐々に増大するナフサ需要があると予想している。そのうちの157百万トンは、北東アジアからきて、約54百万トンはアジアと太平洋地域(インドのサブ大陸、南アジアとオセアニア)からくる。
  • それを大局的に見れば、これは現在の市場を2倍のサイズにするということだ。原料多様化、クラッカーの原料の軽質化、成長するリサイクル化の取り組み、という沈静化させる要因にもかかわらず、特にアジアには、石油精製企業によって満たされるべき、ナフサのかなり大きな必要性がまだあるのだ。

困難な市場環境をきりぬける

ナフサについて

  • しかしながら、このシナリオはすべての石油精製企業を利さないだろう。第一にICISはナフサの供給は、2025年以降まで、需要の増加を満たすのに十分であり続けると予想している。
  • 中東は、カギとなる供給者だ。その供給は、多くのナフサがガソリンと芳香族のために用いられるため、より軽質になる傾向がある。
  • 米国のシェール開発は、この市場が追加的な軽質素材の供給者として出現することを可能にした(メモ:pentanes plusとは何?C5のこと?)。アジアは最大の輸入車だが、需要は域内の石油精製の拡大に制限されている。
  • 一方、国際的なガソリンの余剰は進展すると予想されている。燃費の改善と、EVの拡大、ナフサが石油化学の原料に用いられるシェアの拡大の牽引などの要因のためだ。

COTC

  • 第二に、多くの新たなプラントは、非常に統合されており、いわゆる原油から化学物質へ(crude oil-to-chemicals:COTC)の操業にむけてすすんでいる。既存の転換技術を通した増加する転換により達成された技術だ。特に、HengliとZhejiang Petrochemicalの製油所は、すでに操業を開始しており、40%が石油化学品の算出となる。
  • 注目に値するのは、Tangshan Risunが、計画が最初により高い化学品の変換を達成すると思われたときから、その調整を改訂したことである。一方、既存の石油精製企業では、化学品への変換をまた進めている。
  • Relianceはその事業を変換させる野望を持っており、Jamnagarで原油からの精製で70%以上、競争力のあるオレフィンと芳香族での化学品の造成変換を達成することを最終的な目標としている。
  • 2018-2025の間のアジアでの追加的なエチレンの約半分の供給は、石油精製と石油化学の統合されたコンビナートから来るだろう。

困難な市場環境の中での石油化学・石油精製の提携

  • 商社に供給することにより石油化学の原料のシェアを得ようと希望する石油精製企業は、市場にあるナフサの十分な供給を考慮すれば、それが困難なものだとわかるだろう。
  • それはそれとして、製油所はさらなるオペレーショナル・エクセレンスをすべての側面で達成する努力を費やす必要がある。研究開発だけでなく、生産でも、他社とのパートナーシップを通したサプライチェーン・マネジメントでも、研究開発でもそれらを進め、彼ら自身をコストカーブの左側に動かさなければならない。
  • 石油精製と石油化学との間でのインテグレーション、またはより密接な提携とパートナーシップもまた必要だ。よりシームレスな操業は、石油精製企業と石油化学品の生産者、双方にとって利益をもたらす。
  • 一方、石油化学は、石油精製の増大するターゲットとなるであろう一方、それはただ一つの残されたターゲットではない。石油精製市場は、結局の所、石油化学のし上よりも10倍以上大きいのだ。
  • 燃料油(ガソリン、軽油、ジェットケロシン)への成長需要はまだあり、特にインドサブ大陸と東南アジアではそうだ。新たな製油所の投資なしでは、インドサブ大陸は燃料を欠くことになる。
  • さらに、東南アジアでは、燃料と石油化学の原料の不足が成長への強い需要の中で広がり続けるとともに、製油所の投資が不足している。
  • 2020年から2025年にかけて、アジア太平洋での石油需要は、3.3百万bbl/day成長すると予測されている。北東アジアでは一方、石油化学の原料の不足が成長するが、燃料の余剰も成長する。
  • それゆえ、石油精製は、市場の需要概要を注意深く研究し理解する必要がある。需要へ供給する方法を計画し戦略化するためだ。市場への正しい生産ミックスを提供し、世界のニーズに対し適切な状態に石油精製企業があることは必須だ。
  • 事業戦略のシフトを必要としつつ、石油産業のストーリーはたったの10年前と比べて大きく変わった。次の10年とそれより先には、私達はこれより小さなダイナミズムを予想すべきではない。
  • 下押し方向のリスクも、サステイナビリティへのより強い注意の中にはある。石油精製業者は常に中期的・長期的な市場の展望を持ちつつ、産業の変化に敏感でなければならない。

  • (referenceの載せ方は雑にする)

    • Tse, M. Y.. (2020) "Is the future of refiners in Petrochemicals" ICIS.