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スキャンスナップ読み込み。この辺は通読していないが、後のために目次情報+αぐらいは残しておこう。 [:contents]

コンビナート統合(2013)

コンビナート統合

コンビナート統合

国際競争力をつけるためには原材料の供給地に近く、労働力の安い、為替変動の受けにくい国で大規模な設備を作るのが有利に思われるが、必ずしもそうではない。一見不利に思える先進国に工場を残して既存設備を利用しながら国際競争力をつけるという方策を本書で提示したい。

目次

  • 第1章今、なぜコンビナートに注目するのか

    1. コンビナートとは何か
    2. 「コンビナート・ルネサンス
    3. 石油製品需要の急減と製油所の縮小
      • エネルギー供給構造高度化法 2009年7月公布、8月施行。
      • 重視油分解装置の装備率を日本全体で10%から13%へ3ポイント引きあげる。
    4. 競争力あるコンビナートなくしてエネルギー・セキュリティはありえない
      • 日本の石油をめぐるエネルギー・セキュリティは、一定規模以上の精製設備が国内に存在することを前提条件として、①海外で自主開発油田を確保することと、②国内で原油を中心に十分な備蓄をもつこととの2つを柱にして、成り立ってきた。最近では、自主開発油田の確保はある程度成果を上げ、原油備蓄は充実していると言うことができるが、肝心の「一定規模以上の精製設備の存在」が、ここにきて急速に不透明感を増してきた。製油所の縮小に歯止めをかけないと、石油をめぐるエネルギー・セキュリティの前提条件が崩壊しかねないのである。

      • 国際競争力を持つ製油所のためにもコンビナート全体の競争力向上が必要。
    5. 石化産業が直面する問題
      • 中東・中国のコンビナートの競争力拡大
    6. 石化産業の将来ビジョンとコンビナート
    7. 石油・石化産業の国際競争力強化

      • 提携強化による3つのメリット
      • 第1は、原料使用のオプションを拡大することによって、原料調達面での競争優位を形成することである。同一コンビナート内の石油精製企業と石油化学企業との間で、あるいは複数の石油精製企業間で、連携や統合が進むと、重質原油やコンデンセートの利用が拡大する

      • 第2は、石油留分の徹底的な活用によって、石油精製企業と石油化学企業の双方が、メリットを享受することである。同一コンビナート内でリファイナリー(石油精製設備)とケミカル(石油化学)プラントとの統合が進めば、リファイナリーからケ ミカルプラントへ、プロピレンや芳香族など、付加価値の高い化学原料をより多く供給することができる。また、エチレン原 料の多様化も進展する。一方、ケミカルプラントからリファイナリーへ向けては、ガソリン基材の提供が可能である。

      • 第3は、コンビナート内に潜在化しているエネルギー源を、経済的に活用することである。残濱油を使った共同発電熱・ 水素の相互融通などがそれであるが、そこで発生した電力や水素については、コンビナート内で消費したうえでなお残る余剰 分を、コンビナート外の周辺地域で販売することも可能である。

    8. 地域経済の活性化

      • 業者1人当たりの製造品出荷額等の都道府県別ランキングで上位13県中10県がコンビナート立地自治体。*1
    9. エネルギー・セキュリティの確保

      • ここまで見てきたように、コンビナート高度統合は、(1)日本の石油産業と石油化学工業の国際競争力を強化する、(2)地域経済の活性化に寄与する、(3)エネルギー・セキュリティの確保に寄与する、という3つの大きな社会的意義を有している。

    10. 本書の構成と執筆分担

      • なお、本書の第2章、第4章および第5章については稲葉和也が、第3章および第7章については平野創が、第1章、第6章、第8章については橘川武郎が、それぞれ執筆した。

  • 第2章コンビナート事業連携の理論と構築スキーム

    1. 「資本の壁」、「人の壁」、「地理の壁」を越えて
    2. 事業連携による経済性”
    3. コンビナート特区構想と構築スキーム
    4. 事業連携とスタグハントゲーム
  • 第3章日本のエチレンセンターの歴史

    1. エチレンセンター発展の概要

    2. エチレンセンターの誕生と発展:石油化学第1期計画、第2期計画

      • 経産省は財閥系を中心とした4社(日本石油化学含む)のみに参入を認めた。
      • また、原料に関しては、ナフサが選択され、結果としてコンビナートの形成が必然となった。石油化学原料としては、当初、重油、灯油、軽油の分解、石油精製系統の廃ガス、改質油などが原料として考えられていたが、石油の消費構造上、余剰傾向にあったナフサの利用が決まった(石油化学工業協会、1981)。ナフサ分解を主体としたために、エチレン以外の誘導品が同時に併産されることになり、これらの留分の総合的利用が不可避であった。なぜなら、これらの余剰留分を化学原料として利用できれば、エチレン価格のより一層の引き下げが可能となるためである。

    3. 石油化学官民協調懇談会による設備投資調整の時代

      • 日本の石油化学工業は急速に成長し、1965年には西ドイツを抜きアメリカに次ぐ世界第2位のエチレン生産能力を持つに至った。

    4. 設備過剰の発生とその対応
    5. 新増設の活発化からエチレンセンターの集約へ
      • しかし、この時期日本のエチレン生産能力が大きく減ることはなかった。なぜならば、アジア向けにエチレンの輸出が急増しており、大幅な能力削減が必要とされなかったからである。むしろ各社は、アジアで欧米のメジャーや現地資本が大型エチレンプラントの新増設計画を相次いで打ち出しているのに対して、追加的設備投資で競争力を高める戦略をとったのである。

      • 長年にわたり700万トン台で安定して推移していたわが国のエチレン生産は、2008年に発生した金融危機、それに端を発する世界経済の失速により一気に縮小する。自動車や家電向け樹脂などエチレンを使う石化製品の需要が急減したことにより、過去最高であった2007年から一転し、2008年のエチレン生産量は688万トン(前年比11.1%")となり13年ぶりに700万トンを割り込んだ5'')。2009年1月には、石油化学大手の各社は一斉にエチレンの減産を拡大させた。

      • 当然の帰結として、国内ではエチレン設備の縮小、集約化が再び論じられるようになった。例えば、リーマンショック直後には、「エチレン生産設備は国内で3~4社あれば十分」との声もあった56)。また、経済産業省は2009年11月に国内化学産業の国際競争力を高める方策などを議論する「化学ビジョン研究会」を発足させ、その中でも議論が展開された。同研究会のサブワーキンググループでは、各企業に将来時点での適切な生産量(設備能力)を問うアンケートが実施された。それによれば、日本全体の適切なエチレン生産規模は年産600万トンという回答が多かったという。

      • 最後に日本のエチレンセンターの歴史を振り返れば、それは常に適正な設備能力を目指す歴史であったといえよう。多くの時点において、それらは民と官の相互作用によって決まっていった。また、やや厳しい言い方をすれば、エチレン製造業の設備投資においては、好調になると楽観論が蔓延し各社が増設を計画し、多くの設備投資が行われ、不調になると悲観論が蔓延し設備の集約化が叫ばれるものの、需要が回復するとその声はかき消され現状は変らないという歴史の繰り返しであったように思われる。こうした過去の歴史からは、今後の議論においては短期的な動向に翻弄されることのない長期的な視座からエチレン設備の集約化や競争力強化の取り組みが行われることの必要性が教訓として明らかになっているといえよう。

  • 第4章コンビナート高度統合

    1. コンビナート高度統合の背景
      • 欧米、中東、インド、東アジア(中国、台湾、韓国)、東南アジア(マレーシア、シンガポールインドネシア)においては、1つの会社が大規模工場を作り、1社体制で石油、石化製品を一貫生産する方式を採用している例が多い。日本の石油・石油化学会社は、これらの国の企業とは異なり、複数の会社が沿岸部埋立地に集まり、世界的に見れば中規模程度の生産体制で石油コンビナートを形成している特徴がある。このような日本的な生産体制は、第2次世界大戦敗戦後資本が不足していた時期に、石油化学産業の未来に大きな期待を寄せる複数の会社が石油・石油化学産業にこぞって進出して、小・中規模工場を建設して、グループ体制でコンビナートを形成してきた結果である。

      • しかし、1996年に特定石油製品輸入暫定措置法(特石法)が廃止され、同年の揮発油販売業法の改正(品質確保法)、1998年のセルフ製油所の解禁が行われた。2001年には石油業法が廃止された。特石法が廃止されて以降、石油製品の輸入自由化が行われることになり、外国から石油製品が流入し、販売価格も均一ではなくなり、市場原理の下での自由競争が始まった。これらの変化を受けて、業界再編の動きが加速することになる。

    2. 世界における石油・石化産業の環境変化
    3. 日本におけるコンビナートの競争力強化とRING事業
    4. RING事業の原型である鹿島コンビナート
      • 2013年に第2エチレンプラント年産49万1.ン設備を5万トン増強して54万トンとし、2014年に第1エチレンプラント年産39万'、ン設備を停止する計画である。これによって固定費が40億円削減される。

  • 第5章RING事業によるコンビナート連携の進展:鹿島・千葉・水島・周南

    • 石油精製ナフサ中には、ガソリン基材として適した高オクタン価のイソパラフィン系C5成分(高オクタン)と、エチレン装置原料として適したオレフィン収率の高いノルマルパラフィン系C5~C6成分と、ナフサ接触改質装置原料として適した重質ナフサ(C7~C9成分)を含んでいる。

  • 第6章統合の進展が期待されるコンビナート:知多・川|崎・四日市・大阪。大分

    • 川崎・四日市・大阪・大分は、統合がそれほど進んでいない、逆に言えば統合の余地が大きいコンビナートとみなすことができる。

  • 第7章連携によらないコンビナートの強化

    1. 製品高付加価値化によるコンビナートの強化
    2. 住友化学・愛媛地区-
    3. 三井化学・岩国大竹地区
    4. 三菱化学四日市地区-
  • 第8章コンビナート統合を超えて

    1. 稀少財としてのコンビナート・
    2. 「資本の壁」と「地理の壁」”
    3. 「資本の壁」を超えて:自治体や国の役割
    4. 「地理の壁」を超えて:コンビナート間広域連携へ
    5. 「国境の壁」を超えて:石油・石化産業の成長戦略

コンビナート新時代(2018)

コンビナート新時代ーIoT・水素・地域間連携

コンビナート新時代ーIoT・水素・地域間連携

*1:p.17でコンビナート出荷額なるものが図表に出ているが、こんなもの公式統計で確認できるのか?出典は工業統計表になっているが。元資料みてもこれで算出できる根拠がよくわからない

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決算書入門

これならわかる決算書キホン50! 〈2021年版〉

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  • サクッと読める超入門レベルの良書。巻末の練習問題は解いていないけど。

第I章決算書のキホン!

  • 上場企業と非上場企業の違いは決算書作成ルールの違い(上場企業は金融証券取引法などがある)

    • 非上場企業の場合には、上場企業のような厳格な会計ルールではなく、実務上は、法人税法の内容に従って決算書を作成すること(税法基準による決算)が一般的に行なわれています。税法基準の場合、不良資産が放置されてしまうなど、事業の実態が決算書に適切に反映されないこともあるため、注意が必要です。

  • 個別決算と連結決算の違い

    • 個別損益計算書では、税引前当期純利益から法人税等を差し引いた最終利益を「当期純利益」と呼びます。

    • 一方、連結損益計算書では、税金等調整前当期純利益(個別と少し名称が違うが実質は同じ)から法人税等を差し引いた当期純利益は最終利益を表していません。ここから「非支配株主に帰属する当期純利益」を差し引いた「親会社株主に帰属する当期純利益」が最終的な利益となります。

    • 非支配株主はグループ内企業の親会社以外の株主

    • 前から疑問だがなんでこんな変な処理をするんだろう。利益面の計上段階から持分に応じて割り引いてた方がいいんじゃないの。

第Ⅱ章貸借対照表のキホン!

  • 貸借対照表の全体像の見方
    • まずは資金の調達源泉。負債と純資産の割合チェック。
    • 次は流動・固定。以下健全順。
      • 固定資産<純資産
      • 固定資産<固定負債+純資産
      • 固定資産>固定負債+純資産→この状態は固定資産が流動負債にまで食い込んでてヤバい。
  • のれん

    • 大ざっぱにいえば、「具体的な資産として表現することが難しい超過収益力の源泉」を指します。

    • 買収先の純資産を超えるプレミア分を「のれん」として無形固定資産に計上

    • 日本でも海外でも、のれんは無形固定資産に計上しますが、その後の取扱 いが異なります。日本では、たとえば5年などの期間にわたって少しずつ費用処理、つまり償却を行ないます。

    • 一方で、国際会計基準(lFRS)や米国基準では、のれんの償却は行なわず、当初計上額を据え置きます。しかし、著しく価値が毀損したときにのみ、減損処理(評価減)をしなければなりません。

  • 債務保証等の情報は注記情報でチェック。「注記情報をあわせて読みこなせるようになって、はじめて決算書を十分に使いこなすことができるといえるでしょう」

  • 包括利益とは
    • 損益計算書を経由して資産計上額を増やすのではなく、貸借対照表の純資産を直接増やす。「その他有価証券評価差額金」という科目を利用。
    • 純利益に時価総額変動利益を加え、「包括利益」と評価。

第Ⅲ章損益計算書のキホン!

第Ⅳ章キャッシュ・フロー計算書のキホン!

  • キャッシュは必ずしも現預金を意味せず有価証券が含まれる可能性も。
  • 営業利益と営業キャッシュフローがずれる要因は2つ。
    1. 非現金支出費用(減価償却費)
    2. 減損も現金を伴わない。
    3. 架空取引も営業CFがマイナスになる。
    4. 運転資本の増大(売掛金、買掛金といった運転資本の増減)
  • 間接法キャッシュフローのスタートは税引き前当期純利益
  • フリーキャッシュフロー=「本業で稼ぎ出した営業キャッシュ・フローから事業維持のために必要な設備投資等の支出を差し引いたキャッシュ・フロー」。
    • 使い道は株主還元。さらなる事業拡大のための投資資金も。
    • 営業CF+投資CF
  • セグメント情報を読み取れ(コラム)
    • 売上、営業利益だけではなく、ROA、総資本回転率などをしれる。
    • さらに、営業利益ー減価償却費を計算すればEBITDAも算出できる。これは簡易的な営業CFとも言えるだろう。
    • 簡易的な営業CFー資本的支出を計算すれば、簡易的なフリー・キャッシュ・フローを算出することも可能だ。

第V章決算書分析のキホン!

  • 売上高利益率
  • ROA(総資産利益率)=当期純利益/総資産
    • 厳密に言えば事業利益で算出(総資産事業利益率)。事業利益は営業利益+受取利息・配当金。
    • ROA=事業利益/売上高* 売上高/総資産 とも分解可能
  • ROE分解=当期純利益/売上高売上高/総資産総資産/自己資本
    • 実は借金を増やしまくり財務レバレッジを効かせまくれば、ROEが向上するわけではない。ROE=(ROA+(ROAー負債利子率)*負債/自己資本*(1-法人税率)。借金が高くなり財務的な危険性が高まると負債利子率が上昇。(ROAー負債利子率)<0だと、借金すればするほどROEは下がる状態に。
  • 売上債権回転期間(月)=売上債権残高/月平均売上高
  • 棚卸資産回転期間(月)=棚卸資産残高/月平均売上高
  • 1人あたり売上高=売上高/従業員数
    • 設備が多いと増える。
    • 付加価値= 売上高-原材料や商品の仕入れや外注費
    • 労働分配率=人件費/付加価値額
  • 財務の安全性
  • 自己資本比率=自己資本/総資本
  • キャッシュ・フロー・マージン=営業キャッシュフロー/売上高。売上高に対してどのくらい効率的に営業CFを稼げたか。
  • CCC(キャッシュコンバージョンサイクル)。仕入から販売後の回収までの日数を意味するもので、日数が短いほど、売掛金や在庫といった運転資本の負担は少なく、資金面でみれば効率的。
  • CFのその他の指標
    • 営業CF対流動比率 当座比率よりも実際のキャッシュ獲得能力と比較可能。
    • 債務償還年数=要返済債務/営業CF。
    • ICR(インタレスト・カバレッジ・レシオ)=(営業利益+受取利息配当金)/支払利息
    • 支払利息の支払原資が実際の利払額の何倍あるのかを測る。
    • CF版ICR=(営業CF小計+利息配当の受取額)/利息の支払額
  • EBITDA(利払前・税引前・減価償却前利益)。減価償却や税制といった国毎に異なる影響を排除。支払利息を考慮外とすることで、企業の資本構成にかかわらず企業全体の評価にも。
    • EBlTDAは運転資本増減考慮前の営業キャッシュ・フローといってもよい

    • 要するに売掛金の大小の影響は受けない。
    • EBITDAの問題:費用扱いすべき項目(修繕費など)を資産計上した場合、計算にあらわれない。

第Ⅵ章分析指標のキホン!

IFRS入門

新・IFRSのしくみ (すらすら図解)

新・IFRSのしくみ (すらすら図解)

  • 発売日: 2016/11/25
  • メディア: 単行本
* 正直あまり理解できていない。見返した。

  • 第1章IFRSの概要
  • 第2章IFRSの考え方
  • 第3章lFRSの財務諸表
  • 第4章収益認識をめぐる規定
  • 第5章リースをめぐる規定
  • 第6章金融商品をめぐる規定
  • 第7章固定資産と減損
  • 第8章企業結合と連結財務諸表
  • 第9章その他の重要な規定

日本基準とIFRSの財務諸表の違い

日本基準においては、財務諸表本体の表示項目について、ひな形や数値基準等の詳細な規定がありますが、IFRSにおいては、財務諸表本体に表示すべき最低限の項目が規定されているのみであり、日本基準のような詳細な規定はありません。

日本基準の貸借対照表においては流動性配列法(流動性の高い項目から記載する方法)がとられていますが、lFRSの財政状態計算書においては固定性配列法(流動性の低い項目から記載する方法)も同様に認められます。また、日本基準において、繰延税金資産および負債は流動、非流動に分類されますが、lFRSにおいてはすべて非流動に分類されます。*1

日本基準の損益計算書には特別損益の区分がありますが、lFRSの包括利益計算書においては、そのような区分は認められず、したがって経常損益の表示もありません。また、日本基準において、費用項目は機能別(売上原価、販売費および一般管理費等)に分類されますが、lFRSにおいては、機能別に加え、質別(原材料費、人件費、減価償却費等)に分類することも認められます。

減損の徴候に関して

  • 内的要因と外的要因の2種類が存在

    • 外的要因

      • 資産の市場価値の著しい下落により減損の兆候があると考えられる場合について、日本基準では、帳簿価額からおおむね50%程度以上下落した場合とされていますが、IFRSではそのような数値基準はなく、実質的な判断が必要になります。

      • lFRSにおいては、市場金利の著しい上昇に伴い、使用価値の測定に用いられる割引率が上昇し、その結果回収可能価額が著しく減少する見込みである場合、減損の兆候があると考えます。また、企業の株式の時価総額が、当該企業の純資産の帳簿価額を下回る場合にも減損の兆候があると考えます。日本基準においては、そのような規定はありません。

    • 内的要因

      • 営業損益またはキャッシュ・フローの状況により減損の兆候があると考えられる場合について、日本基準では、それらがおおむね過去2期継続してマイナス(赤字)の場合とされていますが、lFRSでは、それらが当初の予算との比較において著しく悪化している場合とされています

  • IFRSでの減損判断は日本基準のそれと比べ、全体として高度な経営判断が必要。

    • IFRSにおいては、減損の兆候がある資金生成単位について、回収可能価額(使用価値と処分費用控除後の公正価値のいずれか高い金額)と帳簿価額の比較を行います。回収可能価額が帳簿価額を下回る場合には、その差額を減損損失として認識します。

    • 日本基準では割引前将来キャッシュフローと帳簿価額の比較を行ってから、回収可能価額と帳簿価額の比較を行う。割引前将来キャッシュフロー<帳簿価額とならなければ減損の認識は発生しない。

*1:以下強調部は全て私によるもの

ブタジエンというガスについて

ブタジエンの原料は何か

  • CH2=CH-CH=CH2
  • 合成ゴムなどの原料。ナフサ分解で副生するBB留分から得られる。気体。(石油化学協会(2020)『石油化学工業の現状』)
  • BB留分とは
    • ナフサ分解及びFCCで副生するガスに含まれるブタン・ブチレン留分。主としてブタジエンの抽出原料に使われ、ブタジエン抽出後のスペントBBはイソブチレン、ブテン-1の抽出用及びポリブテンの原料などに用いられている。C4留分ともいう。気体。(石油化学協会(2020)『石油化学工業の現状』)
  • 『新版石油化学プロセス』(2018年)によれば、分解炉でのブタジエンの収率はナフサを原料とした場合4.9%(エチレン29.8%)、エタンの場合1.1%(エチレン40.0%)。ナフサの場合、ブタンは0.3%、ブテンは4.2%、ちなみにC5は2.3%。(ここまで全てvol%)。
    • 一般的なナフサクラッキングベースのエチレンプラントでは, エチレンの生産量に対しておおむね4~15%のブタジエンが得られるとされている。(Ibid.)
  • C4炭化水素とは(ACC(2019)"2019 Guide To The Bussiness Of Chemistry")
    • 4つの炭素原子を含む炭化水素。ブタン、ブテン、ブタジエン、ブチレンを含む。
      • ブタンはC4H10。
      • ブタジエンはC4H6。
      • ブテンはC4H8。ブチレンもC4H8(区別しない場合の方が多い)。
  • (ブテンについて)化学式はC4H8。炭素数4の脂肪族鎖式不飽和炭化水素。ブテンともいい,3種類の構造異性体がある。常温・常圧下では気体だが,加圧または冷却によって比較的容易に液化する。反応性に富む。
    • ナフサ分解プロセスのC4留分あるいは石油の接触分解の副産ガスC4留分などに存在し,これらから蒸留その他で分離される。用途はアルコール,ケトン,有機酸などの含酸素化合物の合成,ブタジエンの製造など。(『百科事典マイペディア』(平凡社)。コトバンクから参照)
    • (1) ブタンから水素原子2個を除いた2価の原子団 -C4H8- 。1,4-ブチレン,α-ブチレン,β-ブチレン,2,3-ブチレンの4種の異性体があるが,そのうち1,4-ブチレンのみはテトラメチレンという。 (2) 石油分解ガス中に含まれるガス状炭化水素。正式の化学名はブテン。(『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』。コトバンクから参照)

ブタジエン原料のトレンド

産業構造審議会産業技術環境分科会研究開発・イノベーション小委員会評価ワーキンググループ(2019)『高効率な石油精製技術に係る研究開発支援事業技術評価報告書(中間評価)(案)』から下記引用。

ブタジエンは、現状ほぼすべてがナフサを原料とするエチレン製造装置(ナフサクラッカー)の副生物として製造されている。そのためブタジエン供給は、エチレン製造装置の動向に大きく左右されるが、近年新設されるエチレン製造装置は、世界的にナフサに対し安価な天然ガスシェールガス中のエタンを原料とするエチレン製造装置(エタンクラッカー)にシフトされつつある。

一方でブタジエンの観点から見ると、エタンクラッカーにおいてはエチレン以外の化学品はほぼ副生されないため、ブタジエンは製造されない。そのため、エチレンに比べブタジエン供給比率は相対的に低下している。

・・・・・・エチレン製造装置の原料はエタン等にシフトするなど多様化しており、相対的にナフサを原料とするエチレン製造装置の比率が減少傾向にあることから、ブタジエンの需要に比べて、ブタジエンの供給能力の伸びは相対的に低下し、一時的な市況価格の変動はあるものの、将来的なトレンドにおいて、ブタジエンの需給ギャップは拡大するものと見込まれる。

ブタジエンの目的製造に用いる原料としては、ブタジエンと同じ炭素数4の留分(C4留分)を用いることが最も効率的である。C4留分は製油所の常圧蒸留塔(トッパー)の他、重質ナフサの接触改質装置(リフォーマー)や重油の流動接触分解装置(FCC)などから副生される。

C4留分のうち、イソブテンはメタクリル酸メチルやETBEなどの原料として使用され、ノルマルブテンもメチルエチルケトンやエチレンとの不均化によるプロピレン製造用の原料として使用されている。また、イソブタンはノルマルブテンと反応させることでアルキレートガソリンへ転換される。しかしながら、ノルマルブタンは蒸気圧調整を目的としたガソリンへのブレンドや、燃料用途としての利用に限定されている。ノルマルブタンを燃料の観点で見た場合においても、シェールガス生産の拡大により原油対比のガス価格が低下傾向にある中、原油由来のブタンよりもLNGを調達する方がコスト的に優位となる可能性がある(図4)。

製油所において、ブタンなどのガス燃料が余剰となると、製油所運転に制約が生じ、原油処理や分解装置の稼働を低下させなければならない環境となる可能性がある。そこで、将来余剰が見込まれるブタンを原料にブタジエンを目的製造することにより、ブタンの高付加価値化が実現でき、石油のノーブル・ユースを推進することが可能となる。

ブタジエンの特性

  • ブタジエンは、2つの反応性二重結合を持つため、特に汎用性の高い化学物質だ。将来的にはブタジエンは豊富な供給量が見込まれているため、安定した価格で供給されると予想されている。 このことが示唆するのは、多くの大手化学企業の研究開発部門では、ブタエンやブタジエンが主要な関心事ということだ。(Smiley, R. A. & Jackson, H. L..(2002)"Chemistry and the Chemical Industry"CRC Press. p.134)
    • 性質:無色、無臭、可燃性のガス。沸点は-4.7度C。熱的に二量化し、酸素と接触して爆発性の過酸化物を形成する。(以下Ibid.)
    • 商用グレード:反応を抑制されたブタジエンは液体としてタンクローリー、タンクカー、スチームシリンダー(ボンベ?)で出荷されます。二量化を防ぐために冷蔵保存されています。
    • 用途:最大の用途はポリブタジエンへの重合や、スチレンとの共重合によるタイヤ用合成ゴム(SBR)、その他のゴムでの用途です。その他の用途では、耐油性ゴム(ネオプレン)用クロロプレンの調合、ナイロン用ヘキサメチレンジアミンの調合にも使用されています。
  • 日本では、年間約90万トンのブタジエンが生産されており、ほとんどが合成ゴムの原料として使用されている。・・・・・・。欧米では合成ゴム、合成樹脂エラストマー以外にアジポニトリル、さらにその誘導品としてヘキサメチレンジアミンなどの原料として供給されている。

ブタジエン市況

2000年代前半までは,エチレンの生産量の伸びに比べ,ブタジエンの消費すなわち合成ゴムの生産の伸びが小さかったことから,ブタジエン価格は低く抑えられていた. しかしながら2000年代中ごろから新興国経済の成長による需要の拡大および中東・米国でエタンクラッキングベースのエチレンプラントの増設が続いたことなど2)から,ブタジエン不足懸念が高まり2010年代前半にかけて価格が急上昇し、トン単価3000ドル超の高値をつけた。2013年ごろになると、中国経済の減速懸念からブタジエン価格の高騰は落ち着いてきたが、急激なブタジエン価格の変動に対応するため,各社でエチレンプラントの稼働状況にブタジエン生産量が左右されるブタジエン抽出法を補完することができるブタジエン直接製造法の開発が進められている。(『新版石油化学プロセス』(2018年))

首尾よく再編が進んだとしても、一部の川下業界へマイナス影響が及ぶことがあるかもしれない。たとえば、エチレン生産の際にできるタイヤ原料のブタジエンに関しては、将来的に不足が生じることが懸念されている。

タイヤの生産は増えており、合成ゴム各社はすでに、タイやシンガポールにエコタイヤ向けの工場を新設している。今後はそうした海外シフトが一層進みそうだ。

ただし、こうしたケースは一部に限られる。これまでは市況が低迷しても我慢していれば回復してきた歴史があるものの、「一息ついてそのままにしておくと、後々大変なことになる」と、経済産業省の茂木正化学課長は警鐘を鳴らす。 (『週刊東洋経済』「経産省が促す「石化再編」、その狙いとは?」2014年11月22日号)

スチレン・ブタジエンゴムとは

  • 略称SBR.スチレンモノマーとブタジエンを共重合させて製造する最も代表的な汎用合成ゴム。天然ゴムに比べ耐老化性、耐熱性、耐摩耗性などが優れている。自動車タイヤをはじめ、履物、工業用品、ゴム引き布などに使用される。固体。なお、このゴムのラテックス(乳液状)は紙のコーティング剤や繊維処理剤などとして重要な役割を果たしている。(石油化学協会(2020)『石油化学工業の現状』)

石油精製の未来は石油化学にあるのだろうか TSE(2020)

石油精製の未来は石油化学にあるのだろうか TSE(2020)

  • 過去10年間で世界が目撃したのは、石油供給のピークについての心配から、それほど遠くない未来にある石油需要のピークの考慮へと、急激なシフトだった。
  • 供給と需要の認識のこうしたシフトは、石油精製というビジネスについての部分的な再考を引き起こした。特に、石油化学は、石油精製企業にとってますます重要なターゲットとしてみられている。
  • しかしながら、石油化学が疑いもなくひとつのチャンスである一方、すべてのこうしたチャンスが石油精製企業にとって利用可能なわけではない。おそらくはこれは、すべての石油精製企業に開かれた選択肢ではない。
  • 幸運なことに、石油化学がますます重要な役割を石油需要においてはたすであろう一方、石油精製企業にとっては石油化学をこえるストーリーが残っている。

石油化学市場のチャンス

  • 私達はほとんど、石油化学市場のポテンシャルを無視している。石油化学製品はどこにでもあり、それらは私達の現代の社会にとって不可欠だ。
  • シングルユースのプラスチックを減らす必要性に対しては公衆の注目が高まっているが、消費者文化には本質的な変化が今日まだ起きていない。われわれはいつも、次のよい財の探求の途上にいる。ファッションで流行にのるため、または、形態の最新モデルを所有するためだ。
  • この行動は、特に発展途上(国)の経済で、都市化と中間層人口の増大を背景として生じている。可処分所得の上昇とともに、それはより大きな消費を駆り立てるだろう。
  • The Brookings Institutionという、(米国の)ワシントンに基盤を持つ非営利の公共政策についての組織は、毎秒、5人の人々が中間層人口に加わっていると評価している。
  • ICISの予想では、2040年までの長期では、石油化学物質の総需要は、毎年3.2%ごと平均で上昇する。GDPよりもわずかに上の値だ。ポリエステルとポリオレフィンが強い成長をみる。
  • 絶対な観点から成長を見ると、ICISは2018年と2030年の間で、世界が全体として石油化学品の需要が約193百万トン定期的な上昇を予想している。そして、その次の2040年までの10年間で、加えて162百万トンの需要が上昇すると予想している。ポリオレフィンは、その成長に対する主要な要因となる。

原料の多様化と、成長するリサイクル化の取り組み

原料の多様化(石炭、天然ガス、そしてシェールガス

  • それはそれとして、相当な355百万トンもの追加の石油化学物質を満たす必要のある原料が、石油精製のターゲットとなる。しかしながら、すべての石油化学の原料の需要が石油精製が利用できるわけではない。原料の多様化(dicersification)と成長するリサイクル化の取り組みのためだ。
  • スチーム・クラッキング石油化学生産のカギとなる原動力であリ続ける一方、非伝統的な方法も重要なシェアを得ると予想されている。そうした非伝統的な方法とは、石炭からオレフィンへ(coal-to-olefins:CTO)や、メタノールからオレフィンへ(methanol-to-olefins:MTO)そして、プロパンの脱水素化(propane dehydrogenation:PDH)などだ。それらは10年後に12%ほどになると予想されている。10年前(メモ:いつをreferするか微妙。現在のこと?それとも2010年前後?)にはたったの2%にもかかわらずだ。
  • PDHの上昇は、特に米国と中東から輸入されたNGL(液化天然ガス)の入手可能性と、プロピレンの成長する需要に支えられてきた。意図的なプロピレンの生産は、副産物(co-products)の管理なしでプロピレンの需要にこたえるためあまり資本集約的(capital-intensive)ではなく、魅力的な選択肢となってきた。
  • 注目する価値のあるのが、2010-2018年に増加したプロピレンの能力の30%近くが、PDHだったということだ。より大きなPDHの能力が予想されている。そして、PDHは2030年までに世界的にはプロピレンの供給の約18%を占めると予想されている。
  • 一方、CTOとMTOの投資は中国で行われ続ける。石炭をめぐる環境的な心配はあるものの、これらの石炭立地な内陸の領域ではまた、中国政府にとって優先順位が高いのだ。
  • CTOとMTOの約5.9百万トン/年(tonnes per annum:tpa)の能力が2020-2022の間に加えられると予想されている。さらに、輸入されたメタノールに依存するMTOの発展は、しくじると予想されている。
  • しかしながら、中国の大きな石炭の予備を考慮すれば、CTOへの投資は残るだろう。ICISは約5.2百万トン/年のCTOの公表された能力が投機的であると考えている。
  • 石油精製企業に対する原料市場を部分的に取って代わるであろう非伝統的な方法に加え、スチーム・クラッキング原料スレート(slate?)の軽質化は、ナフサの必要性を幾分か減らすだろう。
  • この動きは、アメリカと中東の国内のエタン・クラッキングの拡大に、主に理由を帰すことができる。
  • 特に、米国には2017年以降立ち上げられた8百万トン/year以上のエタンクラッカーの容量がある。さらなる6.6百万トン/yearが現在から2022年までに加えられると予想されている。
  • アジアなど国際的な市場では、輸入されたエタンとLPGの増大した利用がある。この地域での将来の拡大には、the Zhejiang Satelite Petrochemicalのエタンクラッカー計画が含まれる。この計画は、2021年と2023年に立ち上がる、2つの1,250,000トン/yearのエタンクラッカーで構成されている。
  • 一方、PetroChinaも6000,000トン/yearのエタンクラッカーを新疆(Xinjiang)区で2023年に立ち上げることを計画している。これはタリム盆地の油田から得られた国内のエタンを利用するものである。

リサイクル化の取り組み

  • さらに、特にプラスチックでのリサイクルの取り組みはは、サーキュラー・エコノミーへの採用にむけた情熱に駆動させられて、牽引されている。バージン・レジンの需要の一定のポーションは、それゆえ原料の需要も、置き換えられるだろう。その影響は長期ではより大きいおよぶように感じられるが。
  • プロピレンの市場では、現在、世界のポリプロピレン(PP)生産のたったの2%のみが、現在リサイクル品で占められている。ICISは、そのシェアが2040年までに3倍以上になると予想している。

ナフサの役割

  • しかしながら、米国と中東の外では、ナフサが重要で妥当なクラッカーのフィードストックでありつづける。アジアでは、ICISは、2018-2040の間で210百万トンの徐々に増大するナフサ需要があると予想している。そのうちの157百万トンは、北東アジアからきて、約54百万トンはアジアと太平洋地域(インドのサブ大陸、南アジアとオセアニア)からくる。
  • それを大局的に見れば、これは現在の市場を2倍のサイズにするということだ。原料多様化、クラッカーの原料の軽質化、成長するリサイクル化の取り組み、という沈静化させる要因にもかかわらず、特にアジアには、石油精製企業によって満たされるべき、ナフサのかなり大きな必要性がまだあるのだ。

困難な市場環境をきりぬける

ナフサについて

  • しかしながら、このシナリオはすべての石油精製企業を利さないだろう。第一にICISはナフサの供給は、2025年以降まで、需要の増加を満たすのに十分であり続けると予想している。
  • 中東は、カギとなる供給者だ。その供給は、多くのナフサがガソリンと芳香族のために用いられるため、より軽質になる傾向がある。
  • 米国のシェール開発は、この市場が追加的な軽質素材の供給者として出現することを可能にした(メモ:pentanes plusとは何?C5のこと?)。アジアは最大の輸入車だが、需要は域内の石油精製の拡大に制限されている。
  • 一方、国際的なガソリンの余剰は進展すると予想されている。燃費の改善と、EVの拡大、ナフサが石油化学の原料に用いられるシェアの拡大の牽引などの要因のためだ。

COTC

  • 第二に、多くの新たなプラントは、非常に統合されており、いわゆる原油から化学物質へ(crude oil-to-chemicals:COTC)の操業にむけてすすんでいる。既存の転換技術を通した増加する転換により達成された技術だ。特に、HengliとZhejiang Petrochemicalの製油所は、すでに操業を開始しており、40%が石油化学品の算出となる。
  • 注目に値するのは、Tangshan Risunが、計画が最初により高い化学品の変換を達成すると思われたときから、その調整を改訂したことである。一方、既存の石油精製企業では、化学品への変換をまた進めている。
  • Relianceはその事業を変換させる野望を持っており、Jamnagarで原油からの精製で70%以上、競争力のあるオレフィンと芳香族での化学品の造成変換を達成することを最終的な目標としている。
  • 2018-2025の間のアジアでの追加的なエチレンの約半分の供給は、石油精製と石油化学の統合されたコンビナートから来るだろう。

困難な市場環境の中での石油化学・石油精製の提携

  • 商社に供給することにより石油化学の原料のシェアを得ようと希望する石油精製企業は、市場にあるナフサの十分な供給を考慮すれば、それが困難なものだとわかるだろう。
  • それはそれとして、製油所はさらなるオペレーショナル・エクセレンスをすべての側面で達成する努力を費やす必要がある。研究開発だけでなく、生産でも、他社とのパートナーシップを通したサプライチェーン・マネジメントでも、研究開発でもそれらを進め、彼ら自身をコストカーブの左側に動かさなければならない。
  • 石油精製と石油化学との間でのインテグレーション、またはより密接な提携とパートナーシップもまた必要だ。よりシームレスな操業は、石油精製企業と石油化学品の生産者、双方にとって利益をもたらす。
  • 一方、石油化学は、石油精製の増大するターゲットとなるであろう一方、それはただ一つの残されたターゲットではない。石油精製市場は、結局の所、石油化学のし上よりも10倍以上大きいのだ。
  • 燃料油(ガソリン、軽油、ジェットケロシン)への成長需要はまだあり、特にインドサブ大陸と東南アジアではそうだ。新たな製油所の投資なしでは、インドサブ大陸は燃料を欠くことになる。
  • さらに、東南アジアでは、燃料と石油化学の原料の不足が成長への強い需要の中で広がり続けるとともに、製油所の投資が不足している。
  • 2020年から2025年にかけて、アジア太平洋での石油需要は、3.3百万bbl/day成長すると予測されている。北東アジアでは一方、石油化学の原料の不足が成長するが、燃料の余剰も成長する。
  • それゆえ、石油精製は、市場の需要概要を注意深く研究し理解する必要がある。需要へ供給する方法を計画し戦略化するためだ。市場への正しい生産ミックスを提供し、世界のニーズに対し適切な状態に石油精製企業があることは必須だ。
  • 事業戦略のシフトを必要としつつ、石油産業のストーリーはたったの10年前と比べて大きく変わった。次の10年とそれより先には、私達はこれより小さなダイナミズムを予想すべきではない。
  • 下押し方向のリスクも、サステイナビリティへのより強い注意の中にはある。石油精製業者は常に中期的・長期的な市場の展望を持ちつつ、産業の変化に敏感でなければならない。

  • (referenceの載せ方は雑にする)

    • Tse, M. Y.. (2020) "Is the future of refiners in Petrochemicals" ICIS.

2019 Guide to the Bussiness of Chemistry(2)

2019 Guide to the Bussiness of Chemistry 機械翻訳ぽくなっていると思う)

  1. 化学と経済 
  2. 化学という産業とは何か → 今ここ
  3. CHEMISTRY 101
  4. 合衆国における化学産業の貿易
  5. 化学産業のグローバルなお仕事
  6. イノベーション
  7. 未来の投資:資本
  8. 雇用
  9. 環境、健康、そして安全
  10. エネルギー
  11. 流通
  12. 国家と地域における化学

2. 化学という産業とは何か

  • 化学産業はアメリカでもっとも古い産業のひとつだが、現在も変革し続けていて、バイオテクノロジーナノテクノロジーなどハイテクや、他の産業でも応用可能な発展的素材にむけて多様性が増している。

  • アメリカの化学産業は、世界の化学産業の合計の12%を占め、中国についで2番目である。

  • 化学産業は合衆国で最大の輸出セクター。航空宇宙産業・自動車よりも大きい。アメリカの輸出の1ドルにつき10千と以上が化学物質や関連する製品が占めている。
  • 化学産業で雇用されるアメリカ人は、世界でももっとも生産的だ。製造業全体よりも高い給料を受けるが、その背景にはより高い技術的スキルとますます向上する生産性がある。
  • 化学産業は、経済的な北アメリカ産業分類システム(the North American Industrial Classification System (NAICS)のような学名命名法(nomenclature)によって容易に理解されない。
    • これらの定義の基本は、関連する生産活動の概念に基づいている。対照的に、化学産業は大いに市場主導型(market-driven)だ。生産活動に加えて、産業セグメントの中で顕著なマーケティングや、配送、知的財産、その他の能力を考慮することもまた重要だ。
    • 統計的な分類よりもむしろ、産業は4つのメインセグメントを持っているとして典型的には見られている。その4つとは 基礎化学品(basic chemicals)、スペシアリティ(speciality chemicals)、農業化学品(agriculutural chemicals)、そして消費者製品(consumer products) である。
      • ただし、これらのセグメントの間の境界ははっきりと定義されたものではなく、ある程度の重複が存在する。たとえば、建築用のコーティングのようなスペシアリティの中には、消費者製品であると考えられるものもある。特徴は次の表に示す。
品目 基礎化学品 スペシアリティ 農業化学品 消費者製品
産業のサイズ(10億ドル) $340.8 $93.1 $31.8 $87.5
製品の値段(1ポンドあたり) $0.80ドル以下 $1.75以上 $0.30- $1.50 $2.00以上
長期間の成長予想(X GDP) 1.6 1.3 1.0 1.2
費やされた資本の経済的リターン(10年平均) 7% 12% 5-15% 15%

自分用メモ:1ポンドは約0.45kg。

  • さらに、いくつかの重複もこれらのセグメントで生じている。区別をさらにぼやかしてしまう。
    • たとえば、次の2,30年の間には、バイオテクノロジーがもっと伝統的な(基礎)化学産業へと普及する様がみられるだろう。バイオサイエンスの重要性が増すのだ。ナノテクノロジーはセグメントをまたいで利用され、消費者製品市場は拡大を続ける。ますます、化学産業は、人間の欲求とニーズに対するより知識集中型の解決策を提供するようになるだろう。

価格構造

  • 産業のサイクルに渡る典型的な価格構造は、化学産業の主要なセグメントの間で異なっている。
    • 基礎化学品は、価格は、原料(feedstock)と材料(materiarl)のコストによって支配されている:あわさって、それらは総費用の65%以上を占めている。
    • 一方、消費者製品は、広告費や研究開発(R&D)、他の販売費および一般管理費(SG&A)の出費などがより高い出費の割合を占める。消費者製品に対するプロフィットマージンは、スペシィアリティよりも高くなる傾向がある。スペシィアリティのマージンは基礎化学品よりも高くなる傾向がある。
    • 農業化学品では、肥料産業は基礎化学品のコスト力学を反映しやすい一方で、作物防疫(crop protection)産業は、もっと密接にスペシアリティに似ている。

生産指数

  • 連邦準備委員会(FRB)は、製造業、鉱業、そして電気・ガス設備産業のアウトプットの計測する295もの(?)工業生産指数を提供している。この詳細で統合されたアウトプットのシステムは、(需要志向の)市場と(供給志向の)グループにそった詳細を提供する。一般的に、全ての4つの数字で構成されるNAICSだけでなく、より詳細なサブ産業もある。これらは、本来のアウトプットを計測するものでありーーつまり、生産と、活動(量に基礎をおいたもの)、価格変動の影響は含まれていないーー基礎となる年の水準に相対的だ(この場合2012年)。重み係数(weighting factor)は、それぞれのコンポーネントの生産指数に対して公表される。化学製造全体へのそれぞれのセグメントの相対的な重要性を量化するためだ。 f:id:chamk:20200405012429j:plain

価格指数

  • 労働統計局(the Bureau of Laboor Statistics;BLC)は、製造行により生産される幅広い財とサービスに対して、国内の価格データを収集している。これらはPPI、生産者物価指数(producer price indices)として一般的に呼ばれている。そうした数字は製造者の報酬や、インセンティブ、追加料金(surcharge)を含んでいる。価格は品質で調整され、企業間の転移を含む一方、営業税(sales tax)と物品税(excise taxes)は含まれていない。指標は基礎となる年の水準に相対的な、販売会社に対する純利益(net revenue)を計測する。これらをFRBの生産指標と比較可能にするため、ACCはこれらを2012年が100になるように再調整している。BLSも、輸入と輸出の価格についてのデータと公表された指標を収集している。ACCはこれらも含め、それらを2012に調整している。

f:id:chamk:20200405012435j:plain

出荷額(shipment value)

  • 主要なセグメントに加えて、化学産業--米国で最大の製造業のひとつ--は、数百ものサブセグメントで構成されている。国勢調査局(the Bureau of the Census)は、この産業の価値を出荷額にそって計測し報告している。出荷が計測するのは、製造施設から出荷される製品の名目的な価値であり、その価値は価格変動に対して調整されていない。備考:これらは、季節要因で調整されていないデータに基づいており、それゆえ、月間の基礎に基づき報告されたデータとは異なる。

f:id:chamk:20200405012445j:plain

財務業績(Financial Performance)

  • 化学企業というラベルで集計された「企業」のデータには、化学企業によって行われた化学ではない事業活動が含まれる。一方、化学企業と分類されなかった企業による化学事業が含まれないかもしれない。以下の数字は、これまでに提示された本章の基礎化学品のほかのデータにはあてはまらない、ということに注意する必要がある。

f:id:chamk:20200405012452j:plain

メモ:chemical businessを化学事業、chemical industryを化学産業として訳し分ければいいのかもしれない

2019 Guide to the Bussiness of Chemistry

2019 Guide to the Bussiness of Chemistry 機械翻訳ぽくなっていると思う)

  1. 化学と経済 → 今ここ
  2. 化学という産業とは
  3. CHEMISTRY 101
  4. 合衆国における化学産業の貿易
  5. 化学産業のグローバルなお仕事
  6. イノベーション
  7. 未来の投資:資本
  8. 雇用
  9. 環境、健康、そして安全
  10. エネルギー
  11. 流通
  12. 国家と地域における化学

1. 化学と経済

  • 化学:それは全ての中にありどこにでもある。そして化学の中のイノベーターたちはさまざまな方法で私たちの生活をはるかに豊かにしてくれている。より健康的で、安全で、サステイナブルで、生産的なあり方へと世界を変えてくれている。
  • 化学→発見とイノベーション→よりよい生産物→改善された生活品質→心の平穏、セキュリティ、享楽

私たちの生活の中の化学(導入のための例示パート)

  • 化学を通して、炭素や水素、酸素のような地球の基本的なブロックは社会を革新するのに役立つ素材へと変化させられる。化学産業*1は毎徒事、自然のままの素材を何百万トン以上も私たちが毎日使う製品へと変化させている。次のようなものが、化学を通して可能とされた、生活を豊かにする製品のほんの一部だ。
    • 典型的な自動車には、3000ドル以上の価値がある化学物質が含まれており、そこにはプラスチック340ポンドと、290ポンド以上のゴム、繊維、コーティングが含まれる。
    • 化学は私たちが着るものをよりよく安全にしてくれる。
    • 世界中の人々3人のうち、1人がスマートホンを持つ。
    • リチウム電池は化学を用いる。
    • 現代のヘルスケアは化学なしでは可能ではなかっただろう。
    • 化学は再生可能エネルギーとエネルギー効率的な技術に本質的だ。
    • 化学はキッチンでの私たちの習慣に革命を起こした。
    • 薬学は人間の健康の中心。

化学産業の経済的寄与

  • 化学は、強く活力のある経済で重要。
  • 続くチャートは合衆国の化学産業のアウトプットの直接利用の推定を表している。これらの推定は"the IMPLAN input- output model"に基づいており、消費する産業や部門による購入を反映している。実際、化学の消費者である産業に対する売上だけでなく、同一企業内の売上(intra-industry sales)も最終的な売上に反映されている。
  • (図)合衆国の化学産業フローチャート(単位:10億円)
  • 出荷売上(shipments) $553.2 + 輸入(imports)$109.1-輸出(exports)$140.2
    • 最終売上(Final Sales) $522.1
品目
同一企業内の売上 140.2
消費部門への売上 381.9
(以下は消費部門の内訳) -
ゴムとプラスチック 68.7
他の製造 62.8
ヘルスケア 44.5
製薬 40.4
紙と印刷 19.2
農業 19.2
コンピューターと電子 16.0
繊維とアパレル 12.2
輸送機器 11.6
金属表面処理(?)(Fabricated Metals) 11.5
建築 11.5
食と飲料 7.6
機械 5.8
石油とガス 5.6
その他の産業 42.6
  • 直接雇用と産業のアウトプットのみを考慮する、伝統的な経済学ではしばしば見過ごされがちだが、化学産業の経済的な貢献はばく大。化学産業が直接的に生み出す仕事は何百もある。産業により直接産み出される職に加え、化学産業やそれに続く出費を誘発する産業は追加の職もサポートされる。化学産業はその雇用者に給料を払い、物資とサービスを購入した。これらの支援社のビジネスは、次に、購入を行い雇用者に給料を払い、それゆえ、化学産業による経済的な支出と再支出が何回かにわたり生み出されることとなる。
  • アメリカ経済における化学のインパクトは、標準的なアウトプットと職のかけ算が示すよりもはるかに大きい。ただ産業に直接関わる職のみを見るが、インプット・アウトプット分析はおもに、下流の顧客産業や最終的な使用よりもむしろサプライヤーの関係性に焦点を合わせる。下流をみると、化学産業の経済は4つの段階で左右される:
    1. 化学物質の実際の生産量
    2. 他の産業のために生の素材や中間物をつくる、化学物質を購入し用いる製品を製造する産業
    3. 消費者財とその他の最終財を製造する産業。それは化学物質を直接に購入するか化学物質に基本を持つ産業用の部品や要素を買う。
    4. 化学に基礎を持つホールセール、小売、サービス産業。
  • 化学物質を製造する産業と消費者との堅実な関係性は複雑だが、化学は数々の主要な消費者製品への鍵を握る。多くの製品が他の産業に分類されうる。たとえば、薬品とパーソナルケアの製品は、消費財と他の最終財に分類されうる一方、農業化学物質は、他の製品に対する中間インプットとして用いられる産業製品を製造する産業として分類されうる。サービスは化学産業が最終消費者に運ばれる方法になってきている(??)。
  • ほぼ全ての産業が化学の製品やサービスを購入し、それゆえ、化学産業に影響を受ける。実際、ほとんどの製造された財は、直接的に化学産業に接している。

*1:"the chemical industry"と"the business of chemistry"の訳し方の違いがよく分からない。ふわっと言えば、「化学産業」と、「お仕事や商売としての化学」というところなのだろうが、特に"the business of chemistry"の方はぴったりした訳語が思い浮かばないので、「化学産業」と両方とも混同してしまっています。

ジャーナリズム関連ななめ読み

奥村倫弘(2017)『ネコがメディアを支配する:ネットニュースに未来はあるのか』中央公論新社

  • ネコ動画=PV至上主義の行きつく先
    • PVは単価が低い。利潤を追求するため、記事を大量に生産しPVを稼ぐ薄利多売な戦略が取られる。
    • 「「ネコ動画」は身近にネコがいれば、誰でも発信できるうえ、しかも現実としてPVがたくさん稼げる驚異のコンテンツなのです。そうしたコンテンツが勢力を増す一方、手に入れるために多くの労力や費用がかかり、発信に万全のケアが必要、かつ社会に伝える意義のあるコンテンツである「ニュース」、そしてそれを支えるジャーナリズムの価値が揺らいでいる印象が見受けられるようにもなりました。その状況を言い表したのが本書のメインタイトル、『ネコがメディアを支配する』です。」(p.6)
    • 著者はPV至上主義の失敗により、既存メディアはその本質である「きちんと話を聞き、分かりやすく伝える」(p.9)ということが重要になるだろうという仮説を示す。
  • 伝統的メディアのニュースと、SNSの投稿やネットメディアの違い
    • 伝統的メディアのニュースの本質は5W1H。「いつ、どこで、だれが、何を、どうして、どのように」
    • SNSの投稿では、5W1Hの要素は不可欠ではない。感情を揺さぶることが重視される。
      • 例)SNSでは事故現場の画像を投稿するだけでOK。記事では、いつどこでだれが何をの4Wを最低限埋める。もし大事故なら、のこりの1W1Hのなぜ、どうしても記者は取材する。
    • SNSの投稿と伝統的メディアのニュースの違いには、情報の断片でよいか、情報の総体が必要かという違いもある。
      • 例)SNSでは「渋谷駅で火事なう」でOK。ニュースではどんな原因の火事か、鉄道の運行にどれくらい影響を与えたか、等、警察、JR、消防の情報を組み合わせることが求められる。
        • この情報を正しく組み合わせるのには多大な労力と、知識が必要になる。
    • ネットメディアと伝統的メディアのニュースには、情報の粘りに違いがある。
      • 粘りとは、簡単に言えばどれくらい長期的な取材が許されているかということ。例えば、週刊誌では日刊紙よりも粘りのある取材がやりやすい。なぜなら、週刊誌の締切が週次であることに対し、日刊紙は日次で取材結果を報告しなければならないためである。このように、媒体の粘りは締切までの長さに左右される。
      • ネットメディアにはには物理的な締切がない。そのため、とにかく早く情報を流そうとしがち。
    • ネットメディアと伝統的メディアのニュースには、全国的な取材網の有無が違う。
      • 賛否はあるが、記者クラブを持っているかどうかも違う。
        • ネットメディアには、まだ取材先からスクープを取れるほどのブランドもない。
  • 著者の考える伝統的なメディアに残された役割は以下のようにまとめられるだろう。
    • 権力は腐敗する。それを防止するためには、監視する人が必要だ。そこに伝統的なメディアの役割がまだ残るはずだ。権力を監視する人自体は、新聞記者でなくともネットでも雑誌でも誰でもいい。しかし、行政や議会等の専門的なテーマを継続的に報じるためには、資金の問題に加え、多くのことを勉強する必要がある。そうした人材を確保することができる候補は、今のところ新聞社しかない。そのため、企業の利益の観点からではなく、公益の観点から、こうした調査報道に携わる人材を確保できる仕組みを用意することが重要だろう。
      • ただし、専門的なテーマのすべてをそもそも頻繁に転勤のある記者がカバーできるのかという問題は残る。だからこそ、理想としては新聞だけでなくネットメディアや市民の活動も求められる。
  • ネコ動画に戦いを挑んではならない
    • 伝統的メディアのニュースは、PV至上主義がもたらすゴミのような情報とは全く違う価値を持っており、そもそも戦う土俵が違う。魅力という観点からすれば、ニュースはネコにかなわない。だから、ニュースはPV至上主義を土俵として選んではだめだ。このことを考えなから、新しいニュースのあり方を模索していかないといけない。
  • どうやって伝統的なメディアのニュースを収益化するか。
    • 速報で収益を得るのはNHKがあるため難しい。
    • 「そこで現実を見てみれば、伝統メディア各社は、キュレーションアプリやポータルサイトを通じて無料記事を配信し、PVに応じて得られる広告によって売上を立てるビジネスモデルを続けつつ、少なくとも自分たちでしかかけない、価値ある記事ほどネット上の有料版でしか読めないようなビジネスに挑戦しています」(p.197)
  • 伝統的なメディアには原点回帰が必要。
    • ジャーナリズムの原則(コヴァッチ・ローゼンスティールからの引用)
      • 原則1 ジャーナリズムの第一の責務は真実である。
      • 原則2 ジャーナリズムは第一に市民に忠実であるべきである。
      • 原則3 ジャーナリズムの真髄は検証の規律である。
      • 原則4 ジャーナリズムに従事する者はその対象からの独立を維持しなければならない。
      • 原則5 ジャーナリズムは独立した権力監視役として機能すべきである。
      • 原則6 ジャーナリズムは大衆の批判および譲歩を討論する公開の場を提供しなければならない。
      • 原則7 ジャーナリズムは重大なことを、おもしろく、関連性のあるものとするよう、努力しなければならない。
      • 原則8 ジャーナリズムはニュースの包括性および均衡を保たなくてはならない。
      • 原則9 ジャーナリズムに従事する者は、自らの良心を実践する事を許されるべきである。
      • 原則10 市民もまたニュースにたいして権利と義務がある。
        • 最後の原則10は瀬川至朗の本に従ったとのこと。新しく2007年に追加された。
    • 混迷の時代だからこそこうした原則に立ち返ることが大事(大意)
  • 生産サイド、流通サイドという言葉は、本文を通して用いられていた。生産サイドは記事の書き手。流通サイドはヤフーニュースのトップ等、ニュースを買い付け、表示させる場。

畑尾一知(2018)『新聞社崩壊』新潮社

新聞社崩壊 (新潮新書)

新聞社崩壊 (新潮新書)

  • あまりちゃんと読んでいない。北海タイムス社の倒産の話は読んだ。危機感を欠いたまま倒産に至る様子がなにか記憶に残った。
  • 新聞社復活のための提言はそれほど目新しくない。いくつかの施策の中で、「値下げ」が第一にあるがおそらく新聞社としてそれは難しいのだろう。そして値下げにより部数が増え、新聞社の利益につながるというのが主張だとすれば、そもそも値下げして部数が増えるという仮説が少し疑わしい。

井川充雄(2018)「ジャーナリズム史--日本型報道規範の形成史」大井眞二、田村紀雄、鈴木雄雅(編)『現代ジャーナリズムを学ぶ人のために』第2版、世界思想社

現代ジャーナリズムを学ぶ人のために〔第2版〕

現代ジャーナリズムを学ぶ人のために〔第2版〕

  • 日本の報道の「公正・中立」というスタンスが特殊なものであり、それが歴史的にどのような経緯で形成されたかを探るというもの。
  • なんか違うな、という感触。フォローされる形成史は戦中まで。戦争へと向かう流れの中で、反戦的な風潮の新聞に対する不買運動が生じたり、国家による統制が進んだ。その結果、権力に批判するのではなく迎合するジャーナリズムが生き残った。というのが論旨。
    • 公正・中立という日本のマスコミのスタンスと、政府への批判を抑制する姿勢という2点では、全く言っていることが異なる。だから、公正・中立の原点を戦前に求めるのはなにか違う気がする。企業の利潤追求の結果こうなった、ということも著者は言っているようだが、新聞社の抜いた抜かれたの世界では決して反権力的な報道が抑制されるわけではないようにも思えるので、よくわからない。
  • これの分析の方が近そうだ。
    • 「「客観性」とは、気前のいい広告主の豊富な資金をバックに発行部数の増加を目指した、人に不快感を与えない慎重な報道がなされていた時代の遺物だ。しかし、それらはどれも過去の話である。」
    • 雑に要約:新聞のような媒体がもともと党の機関紙として生じてきた経緯から考えると、メディアにおける客観性とは決して普遍的な概念ではない。米国において報道の客観性が重視されるようになったきっかけは、南北戦争後に全米規模の消費市場が誕生し、全国をターゲットにした広告の需要が高まったからだった。広告主たちの需要のもと、メディアは発行部数の拡大を主目的に置き、大多数の人々に受け入れられる報道姿勢、つまり客観性を重視するようになった。
    • 「「広告収入に支えられた報道の黄金時代に戻ろうとするジャーナリスト」は、「高卒労働者が終身雇用の職を得てミドルクラスの暮らしを享受できた時代に戻りたがる中西部の工場労働者」と、不気味な類似性がある。いずれの黄金時代も、その当時特有の経済・政治的背景があったからこそ始まったものだ。それらはすでに終わっており、再現は不可能である。」